君愛。
扉を開けると、中に居たのは1人の男の人。
ニット帽を深く被っていて顔はよく分からないけれど、きっとあの人は



「雄大だよね?」


私が小さく呟いたその言葉が彼に届いたのだろうか、彼は私の方を見た。


「由美?」


驚いているような表情と懐かしい声。


やっぱりそうだ


「何で、こんなところ......」



そこまで言った所で、ハッとした。
ニット帽に嘔吐のような声。



雄大は癌なのか、そんな疑問が頭の中をぐるぐる回る。


「由美、足どうしたんだよ。大丈夫か?」


前と全然変わらない雄大。


私の大好きな雄大がここに居る。


「雄大っ。」



私は慣れない松葉杖で、彼に近付くと
覆い被さるようにして抱き着いた。



「雄大っ、癌なの?何で、隠してたのっ」


「......やっぱり分かるか。俺、悪性リンパ腫って言う癌みたいでさ、もし俺が死んだらお前と付き合ってると絶対悲しむから、だから悲しませないように、別れたんだよ。」



雄大の言葉に、止まっていた涙がまた溢れ始めた。


「ばかっ、言ってくれたら支えたのに。......ばか雄大っ。」



私は、泣きながら雄大を抱き締め続けた。
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