白い海を辿って。
気になるけれど、先を促すのも急ぎすぎている気がしてただその続きを待つ。
『普通でいたかったのに。』
やがてそんな静かな声が聞こえた。
隣にいて良かったと思う。
すぐ傍にいなければ、きっと聞き逃していた。
『このまま帰ったら、もう会ってもらえないと思いました。』
「え?」
『面倒だと思われたんじゃないかって。』
面倒。
彼女のことをそんな風に思ったりはしないけれど、その不安は過去にそう思われたことがあるということで。
俺もその中の1人だと言われたような気がして少し悔しかった。
でも今までの俺は、過去に接してきた女たちを少し関係が面倒になれば切り捨ててきた。
面倒だと思ったらもう会わない、彼女のその言葉はある意味図星だった。
「面倒だなんて思ったりしない。滝本さんのことは。」
滝本さんだけは。
ほんの少しの興味が、もう後には戻れないほど大きな好きという感情に膨らんでいた。