白い海を辿って。
「お揃い?」
『一緒にできたら楽しいだろうなと思って。柄じゃないけど買ってみた。』
大きな体に当ててみたエプロンは確かに不釣り合いで、その似合わなさがまた可愛い。
「ありがとう。本当に嬉しい。」
なんだか、普通のカップルみたいだ。
こんな何気ないやりとりができることが嬉しくて、幸せで。
彼が選んでくれたエプロンをぎゅっと胸に抱きしめる。
『明日実。』
ふいに上から降ってきた声はとても真剣で、その声に引っ張られるように顔を上げた。
心配げで少し不安な表情の彼と目が合う。
『キスしても、いいか…?』
「え?」
大真面目な顔でそんなことを聞かれて一瞬戸惑う。
私が驚かないように先に確認してくれたんだ。
その優しさがまた心に沁みて、言葉よりも先に涙が溢れる。
『ごめん。嫌ならいいんだ。』
焦ったように言う彼にそうじゃないと伝えたくて、だけど溢れてくるのはやっぱり言葉よりも涙で。
「違う。嫌じゃないよ。」
なんとかそう言えた瞬間、彼の唇がそっと触れた。