白い海を辿って。

「お揃い?」

『一緒にできたら楽しいだろうなと思って。柄じゃないけど買ってみた。』


大きな体に当ててみたエプロンは確かに不釣り合いで、その似合わなさがまた可愛い。



「ありがとう。本当に嬉しい。」


なんだか、普通のカップルみたいだ。

こんな何気ないやりとりができることが嬉しくて、幸せで。

彼が選んでくれたエプロンをぎゅっと胸に抱きしめる。



『明日実。』


ふいに上から降ってきた声はとても真剣で、その声に引っ張られるように顔を上げた。

心配げで少し不安な表情の彼と目が合う。



『キスしても、いいか…?』

「え?」


大真面目な顔でそんなことを聞かれて一瞬戸惑う。

私が驚かないように先に確認してくれたんだ。

その優しさがまた心に沁みて、言葉よりも先に涙が溢れる。



『ごめん。嫌ならいいんだ。』


焦ったように言う彼にそうじゃないと伝えたくて、だけど溢れてくるのはやっぱり言葉よりも涙で。



「違う。嫌じゃないよ。」


なんとかそう言えた瞬間、彼の唇がそっと触れた。



< 157 / 372 >

この作品をシェア

pagetop