白い海を辿って。
しばらくの静寂の後、私から顔を離したけれどまたすぐに唇をふさがれる。
苦しくて息ができない。
それでも必死に彼の想いに応えようともがく。
彼の手と唇が少しずつ下へ下りて、服の中へと入れられた手の感触を肌に感じたとき、私は無意識にその手を掴んでいた。
そして、引き剥がしていた。
驚いたように私を見る彼の表情が、少しずつ硬くなっていく。
ダメだ。
先に謝らせてはいけない。
『ごめん…。』
なのに、何も言えなかった。
ただ涙だけが流れて、体が震える。
大丈夫だと思ったのに。
彼なら、もう怖くないと思ったのに。
ただ力で支配されて拒否することもできなかったあの頃の記憶が、手の感触が、触れられた瞬間に一気によみがえった。
『ごめん…明日実。ごめん。』
それしか言葉を知らないように繰り返す彼の顔を見ることができない。
彼は何も悪くなくて、謝る必要も何もなくて。
なのにもう、言葉が出なかった。