白い海を辿って。

傍にいてもいいの?と泣きながら聞いた彼女は、俺がどれほどの気持ちでいるかなんて関係なく、いつでも離れていってしまいそうだ。

ふっと目を離した隙に、振り返ったらもういなかったみたいに。

簡単に、一瞬で、彼女はいつでも俺から離れていける。


ぐっと強くしてしまった腕に気付き、慌てて力を緩める。

起こしてしまったかと思ったけれど、腕の中にはすやすやと寝息を立てる彼女がいた。


こんな風に眠るために彼女には薬が必要で、その薬さえ俺に遠慮して飲むことができずにいて。

そっとベッドを抜け出して1人で薬を飲もうとしていたとき、彼女はどんな想いでいたのだろう。

再びゆるりと押し寄せてきた睡魔の中で、そのときの寂しさを想う。


2人でいるのに1人にさせてしまったことが悔しくて、自分が情けない。

どんな彼女を見ても面倒だなんて絶対に思わないと、どうすれば伝わるのだろう。


怖い夢を見ていなければいいなと思いながら、そっと眠りに落ちていった。



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