白い海を辿って。
「あの…」
『うん?』
切り出そうとして躊躇う俺を早見先生が不思議そうに見る。
「さっき、理瀬さんに滝本さんと付き合ってることを話したんですけど。」
『え?』
「あの2人って、何かあったんですかね…?」
変に遠回りするより正面から聞いた方がいいと思ったけれど、俺の言葉はかなり不しつけに響いた。
早見先生の表情が一瞬固まったのは、動揺ではなくて不快なことを聞かれたという気持ちの表れのように思えて聞いてしまったことを後悔する。
『青井くんの言う何かが何のことかは分からないけど、俺は知らないな。』
「そうですか。変なこと聞いてすいませんでした。」
『どうして何かあったと思ったのかは知らないけど、周りのことよりも今目の前の滝本さんだけを見ててあげればいいと思うよ。』
早見先生はそう言って俺の肩をポンと叩き、先に帰って行った。
知らないと言ったのが嘘だったのか本当だったのかさえ分からないまま、複雑な感情だけが俺の中に残っていた。