毒舌紳士に攻略されて
あの日からずっと忘れられなかった。
ずっとトラウマになってしまっていた。
好きだったのに――……。

「あれ……もしかして……」

つい男性を見つめてしまっていると、思い出したような声を上げた瞬間、気付いたら足が勝手に動き出していた。

「えっ!?ちょっとめぐみ!?」

背後から琴美やみんなが呼ぶ声が聞こえてくるものの、止まるわけにはいかず、会場を飛び出し階段を駆け下りる。

信じられない。どうして会っちゃうわけ?

ドクン、ドクンと心臓が高鳴り出す。

もう二度と会いたくなかった。
卒業したらこうやって会うことなんて、二度とないと思っていたのに……!

騒がしい一階を通り抜け、入口へと向かう。

「ありがとうございましたー」

元気の良い声に見送られドアを開けた瞬間、ちょうど店内に入ってきた人と肩がぶつかってしまった。

「すみませんっ」

「いや、こちらこそ」

すぐに立ち去ろうとしたものの、ぶつかった相手と目が合った瞬間、足は完全に止まってしまった。
だってそこにいたのは、坂井君だったのだから――。
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