毒舌紳士に攻略されて
「……あれ?」

重たい瞼を開けると、いつの間にか部屋の中は真っ暗になっていた。

「やだ。寝ちゃっていたんだ」

ゆっくりと起き上がり、時間を確認すると夕方の六時を過ぎていた。
そのまま部屋の外に出るものの、廊下も一階も真っ暗。
この時間、お母さんがいるはずなのにな。

不思議に思いながら一階へと降りていき、真っ暗なリビングの電気を点けると、テーブルの上には一枚のメモが残されていた。
そこには買い忘れがあり、スーパーに行ってくると書かれていた。

きっと買いにいったのは近くのスーパーなはず。ならあと少しで帰ってくるよね。
そう思いながらソファーに座ろうとした時、来客を知らせるインターホンが鳴り響いた。

「誰だろう」

ソファーに座ることなく
ドアホンに映る人物を確認する。

「え……琴美!?」

そこに立っていたのは琴美だった。

慌ててリビングを出て玄関のドアを開けると、いきなり私が出るとは思わなかったのか、驚いたように目を見開いた。
だけどそれも一瞬でしっかりと私の姿を捉えると、その顔はみるみるうちに怒りに満ち溢れていく。

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