毒舌紳士に攻略されて
好きって伝えたい!
「どうしたものか……」

新年を迎えたばかりの昼下がり。
帰省している家庭が多いのか、閑静な住宅街はさらにシンと静まり返っている。
そんな住宅街の一角で、他人の家の玄関の前で鍵を握りしめたまま立ち尽くす私は、不審者呼ばわりされたとしても、言い訳できないと思う。

まぁ、坂井君とは顔見知りなわけだし、他人ではないけれど、今の私は明らかに怪しすぎる。

どうして今こんな状況に陥っているのか。話はほんの一時間前に遡る。



* * *

「どう?この話を聞いても、元気の気持ちが信じられない?」

「それは……」

お父さんから聞いている最中、ひたすら昔の記憶を蘇させていた。
高校受験のことを思い出すと、ちょっぴり胸が痛む。
中三のクリスマスイヴの日、大好きだった人に振られてしまった。
だけど少しでも彼と釣り合う人間になりたくて、先生の制止も聞かずに県内でも有数の進学校を受験したのだ。

受験日までずっと彼との関係が続いていたら、結果は違ったかもしれない。
けれどとっくに彼に振られていたし、気持ちの整理がつかず、勉強どころではなかった。
< 307 / 387 >

この作品をシェア

pagetop