毒舌紳士に攻略されて
予想できてはいたものの、やはり結果はついてこなかった。
彼には振られるし、受験には失敗するし。
掲示板に自分の番号がないのを目の当たりにした瞬間、悲しくてショックで泣いてしまったのをよく覚えている。

そして、自分と同じように中庭で泣いていた男の子のことも――……。


「まさかあの子が坂井君だったなんて……」

信じがたい事実に、驚きを隠せない。
そんな私の心情を察してか、お父さんは話を続ける。

「ちょっと信じがたいよな。でも、元気はあの日からずっとめぐみちゃんのことを想ってきたんだ。いい歳した男が青春真っ盛り中にもかかわらず、ひたすらめぐみちゃんとの出会いは運命だったと信じて疑わず、他の女には見向きもしなかったよ」

嬉しすぎる事実に胸がキュンと鳴る。

何年も前からずっと坂井君は私のことを想ってくれていた。
そう信じていいんだよね?

「あの……本当の話なんです、よね?」

嬉しい気持ちを確かなものにしたい一心でお父さんを見つめると、お父さんは肯定するように深く頷いた。
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