毒舌紳士に攻略されて
「あいつの気持ちだけは信じてやってほしい。めぐみちゃんにしたことは許せないかもしれないけれど、元気がめぐちゃんを想う気持ちだけは本物だから」

色々な感情が込み上げてきて、胸が締め付けられる。

ずっと考えていた。
坂井君にあんなことをされても、やっぱり坂井君のことが好きだと再認識させられて。
でもだからといって、行動に移せなかった。
本人の口から真意を聞くのが怖かったし、ずっと逃げていた。
そうは分かっていても、どうすることもできない。それが私なのだとどこかで諦めている自分もいた。

でも今はそうは思わない。
そんな自分が恥ずかしく思える。
いつも肝心なことは言えず、逃げてばかり。
自分で自分が恥ずかしくて嫌なのに、そんな私を坂井君がずっと想ってくれていたなんて――……。

まるで固く鍵が開けられた箱から飛び出すように、好きって気持ちが溢れ出す。

本当はクリスマスイブの日、ちゃんと伝えたかった。
坂井君にとって私は遊びでしかなかったとしても、自分の気持ちだけはちゃんと伝えようとしたのに。


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