毒舌紳士に攻略されて
ここまで来ておいて、今更何を言っているの?って自分に言いたくなるも、そう思っているのは自分自身なのだから、どうしようもない。
でも、もう逃げたくはない。
結果はどうなるのかは分からない。だけど逃げてばかりいては何も解決などしないことだけは、分かっている。

せっかくお父さんが送ってきてくれたんだ。
ここまで来たら、覚悟を決めるしかないんだ。

大きく深呼吸をし、腹を括る。
鍵は預かったものの、さすがにこの鍵を使って勝手に家に入る勇気も度胸もない。
だから普通に家の中にいるであろう坂井君に鍵を開けてもらうべく、震える手でインターホンを押した。

「押しちゃった!」

ドアの向こうからインターホンの音が響いているのが聞こえてくると、逃げ出したい衝動に駆られる。

いやいやいや!ここで本当に逃げ出しちゃったら、ただのピンポンダッシュだ。

足はどうしても逃げたいと言っているものの、なんとか心と気合いでそれを制止し、坂井君が鍵を開けてくれるのを待つ。
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