毒舌紳士に攻略されて
「え……どうして佐藤がここに……?」

珍しく困惑しているし、どう見ても動揺している。
それは坂井君に限ったことではない。私も同じ。
いざ坂井君を目の前にすると、ギュッと胸が締め付けられる。
いつものスーツ姿や私服とは違い、ラフな部屋着のままだし、髪だってちょっとボサボサ。うっすら髭も見えちゃっている。……なのに私の目に写る坂井君は、堪らなくカッコイイ。

胸が苦しくてうまく言葉が出てきてくれない。
そんな私に、坂井君はますます困惑するばかり。

「っ……!」

「坂井君!?」

困惑した表情を浮かべたまま後退りしていた坂井君は、身体のバランスを崩し、後ろに尻餅をつくような形で転んでしまった。
その瞬間、咄嗟に名前を呼んでしまい、目線を合わせるようにしゃがみ込むと、坂井君は恥ずかしそうに顔を隠してしまった。

「……最悪すぎる」

そしてポツリと漏らした言葉に、嫌な予感が頭をかすめる。

やっぱり来ない方が良かったのかもしれない。
お父さんはあぁ言ってくれていたけれど、坂井君の本心は違ったのかもしれない。
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