毒舌紳士に攻略されて
坂井君はもう部屋にいるようで、数名来ているという同期仲間達の笑い声が聞こえてくる。
まだ始まってもいないというのに、既に同期会は始まっているようだ。……まぁ、毎回こんな感じだけど。

「遅れてごめんね」

そっと引き戸を開けると、そこには同期仲間数名がビール片手に盛り上がっていた。

「あっ!やっと来た!!」

「おっせぇぞ佐藤!坂井ずっと不機嫌で大変だったんだからな!」

もう出来上がっているのか、随分とテンションが高い仲間に圧倒されながらも、気になるのは先ほどの言葉。

不機嫌だったのか……。

再び罪悪感に襲われつつも、「ごめんね」と謝りながら入口に近い端の席に座った。

幹事ならここが妥当な席だよね。……同じく幹事の坂井君は堂々と真ん中の席に陣取っているけど。
まぁ、先にきた仲間達を相手にしてくれていたのだろう。
会計は私がやると言ったし、幹事だからと言って一緒に端の席に座らなくちゃいけないというルールもない。
むしろ私にとっては坂井君の近くに座らなくていいのは、ラッキーなことだ。

「お待たせ~!来たよー!!」

「あっ、お疲れ様!」

それから次々と仕事を終えた同期達が到着し、程なくして一ヵ月ぶりの同期会が始まった。
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