獣(犯罪者)に愛された女子高生
その手を振り払うように彼の手を叩いた、けれど腰が抜けたのか全くその場から動くことができなかった。
そんな間抜けなあたしを見た彼は少しずつ距離を縮めてきた。
「やだっ!来ないで!」
「…」
「や、やめッ…」
彼の手が目の前に来たとき、あまりの恐怖で目から涙が溢れた。
…もうダメっ!
そう覚悟し目を瞑った。
ーーーヒヤリ…
「んッ…」
「何故泣く」
「え…?」
「女、何故泣く?」
目尻に触れた冷たい感触、それは彼があたしの涙を拭き取っていた指の感触。
“何故泣く”
そう聞いてきた彼を見ると、透き通る青い目はさっきとは違いとても優しそうだった。
「理由を言え」
「………て、」
「あ?」
「だ、だってッ…」
あたしは一気に体の力が抜け、一瞬止まったように思えた涙が次々と溢れ出てきた。