獣(犯罪者)に愛された女子高生
「チッ、来い」
「えっ?」
手首を捕まれ早足で森の中を進んでいく彼。その後ろをひたすら付いて行くあたし。
彼の背中は広かった。
肩には何かの動物の毛皮のような物を巻き付け、あたしの手を引く左の手首には金属製の輪っかのような物や見た事もないような綺麗な石が嵌めこまれたアクセサリー等を付けていた。
そして、彼が歩く度に暗闇の中キラキラと光る耳元の青い石。
…この人は一体、何者?
「お前、名はなんと言う?」
「へっ?」
唐突に聞かれた質問に思わず変な声を出してしまった。
「聞いてなかったのか?名を名乗れと言ったんだ」
「ぇ、と…佐野、紅音です」
歩きながらこちらを見つめる青い目にドキドキしながら答えた。
「サノ、アカネ?…妙な名だな」
いや、世間一般的にはごく普通…ううん、ヘタしたらかなり地味な方だと思うんだけど。
「じ、じゃああの…あなたの名前は?」
「……セイル・ガシアンダ」
セイル、ガシアンダ?…そっちのが妙じゃない?
と思ったのは言わないでおいた。