彼と私と秘密の欠片
栄太君は誠司さんが居なくなると、きょろきょろと周りを見回し、じっとこっちを見てきた。
私は笑顔を作ってみたけど、栄太君は何の反応も見せないで、はいはいをして移動する。
どこに行くのかと思ったら、慶太君のところだ。
カレーを食べる慶太君に近づくと、栄太君はぐいぐいと慶太君の服を掴んで引っ張る。
「なんだよ。えいた」
「んっんっ」
栄太君がテーブルに手を付いて慶太君のカレーの皿に手を伸ばした。
あっ、と私が思ったら、慶太君がちゃんと止めた。
「えいた、ダメだよ。とうちゃんがおこるから」
そう言って、栄太君を抱っこするようにしてテーブルから遠ざけようとしている。
なんだか、ちっちゃい子がちっちゃい子を抱っこしてるのって可愛い。
見ていて思わず顔が緩んだ。
私は何気なく部屋を見回した。
テレビの方を見たら、箱型のそれの上に、写真たてがあるのに気付いた。
私は、視力がいいから、見えてしまった。
その写真に写っていたのは、今よりも少し小さい慶太君。
そして、その隣にしゃがみ、微笑んでいる女の人だった。
もしかして……
あれが誠司さんの亡くなった奥さん……?
……きっとそうだ。
他に男作ったことが原因で離婚した奥さんの写真なんて、普通飾らないだろう。
その後に再婚したんなら尚更だ。
そう確信を持つと、私はじっとその写真を見入ってしまった。
その人は、黒い真っ直ぐの髪で、少し幼い印象だけれど、笑顔はとても優しくて、とてもいい人なんだろうなあということが、一目で分かった。
この人が、誠司さんの……