彼と私と秘密の欠片
胸元を押さえたいけど、栄太君を支えるのに両腕は塞がっている。
私が手を離したら、栄太君が危ないかもしれない。
「こらっ……栄太!」
誠司さんも私の状況を分かったようで、慌てて私から栄太君を離そうとした。
ほっとして、私は誠司さんの手に栄太君の体重がいったと同時に、栄太君から手を離す。
だけど、栄太君は私の服を離してくれなかった。
「ちょっと……まっ……」
ズルッ……と、キャミソールが下にずれた。
「え……」
だけど、ずれたのは、キャミソールだけの感触じゃなかった。
信じたくなくて、私は恐る恐る下に視線をやる。そして、さっと血の気が引いた。
「あっ……」
誠司さんの慌て、焦ったような声が聞こえた。
「ぎゃーーーーーーーー!!!!!」
ここがアパートという集合住宅の一室だということも忘れ、私は何とも女らしくもない悲鳴を、力一杯に叫んでいた。
急いで胸を押さえて誠司さんに背中を向ける。
栄太君がキャミソール引っ張った拍子に、ブラも一緒にずれてしまった。
そして、あろうことか、私の……私の…………
むっ……胸がっ……
誠司さんに……
「ごっ……ごめん、雛ちゃん! 俺……見てない! 見てないからね!」
焦った声で誠司さんが言った。
「嘘! 嘘でしょ! そんな嘘つかなくていい!」
さっきのリアクションで、見てないは流石に無理がある。
それに、見てないって言うことが見たってことを隠してるってバレバレだ。
「み……見てないよ! ホントに!」
「気ぃ遣ってそんな嘘つかなくていい!」
「ご……ごめん……その、見るつもりはなかったよ! 一瞬だけだったし!」
……やっぱり見たんだ。
自分で言わせといて、やっぱりショックだった。
よりにもよって、誠司さんに……誠司さんの部屋で……初めて誠司さんの部屋に来た日に……
よりにもよってこんな自慢も何もできない胸をっ……!