イジワル副社長はウブな秘書を堪能したい
 これでもかっていうぐらい盛大な溜め息をついて、スキーウェアを睨みながら嫌々袖を通す。

「スキー板も帽子も靴もピンク……」

 思わず呆気に取られる。

 セーラが用意した装備を身につけて仕方なくゲレンデへ。

 そして、二十分以上リフトに乗って連れて来られた大パノラマ。

「ハハハ……」

 乾いた笑いが出る。

 道理でリフトの時間長かったわけだ。

 セーラの口調からせいぜい中級者コースかと思ってたのに。

 大人しくついて来た私は大馬鹿者だ。

 これ……ボーゲンでどうやって降りるの?

 しかも、このコブ。

 これじゃあ、モーグルじゃないか。

 瑠海とイーサンはオリンピック選手みたいにスイスイ滑っていく。

 さすが、セレブ様は慣れていらっしゃる。
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