イジワル副社長はウブな秘書を堪能したい
 怒りで桃華の目が少し涙目になっている。

 周囲の環境が急に変わって、彼女は戸惑っているのだろう。

「桃華には侍女がついてる。桃華の部屋の隣には侍女の控え室があるんだけど気がつかなかった?」

 桃華が侍女を嫌がるのはわかっていた。

 でも、あえてつけさせたのは、環境に慣れさせるためだ。

 もちろん、急に慣れるとは思っていない。

「侍女?王族でもないのに?自分の事はちゃんと出来るんで、侍女なんかいりません!」

「日本の旅館と思えばいい。旅館は布団とか敷いてくれるよね?洗濯物は明日には綺麗になって戻ってくるよ」

「思えるわけないでしょう!とにかく侍女はいりませんから」

「我が儘言わないの。今はみんな喪に服しているんだよ」

「でも……私にはルクエは関係ありません。葬儀は終わったし、私だけでも日本に戻りたいんですけど」

 桃華だけで?
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