イジワル副社長はウブな秘書を堪能したい
 廊下には誰もいない。

 今日はとってもついてる気がする。

 思わず鼻歌を歌いそうになったが、グッと我慢した。

 こんなとこで見つかっては堪らない。

 今までずっと厄日だったけど、今日という日を楽しもう。

 ここに戻れば、またあの大公に睨まれながら食事をしなければいけないのだ。

 大公陛下は私の事をよく思っていないらしい。

 多分、雪山での一件のせいだと思うけど、会う度に目を細めて私を咎めるような視線を投げる。

 あれは生きた心地がしない。

 豪華な食事も不味くなる。

 本当にあのシャーリーの息子なの?

 大公でなければただの偏屈なおじさんだよ。

 ああ~、思い出すだけでムカつく。

 でも、今は忘れよう。

 時間がもったいない。

 この一時を楽しむのだ。

 ラッキーな事に誰にも見つからずに、城を出ることが出来た。
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