イジワル副社長はウブな秘書を堪能したい
 空耳、空耳。

 瑠海がここにいるわけない。

 日本じゃなくてルクエだし、こんなところにふらっとやって来るわけがない。

 気を取り直して……。

「ああ~、どうしよう。もう全部食べたい~」

「だから、全部食べたら?」

 今度はトントンと肩も叩かれた。

本当に瑠海なの?

 ははは、まさかね?

 恐る恐る振り向くと、サングラスをして、帽子を深く被った瑠海が口角を上げた。

 な、な、何でここにいるのよ!

 しかも、サングラスと帽子くらいじゃあ、あなたのその美形の顔なんか全然隠せないのわかってます?

 きっと瑠海ってバレてるよ。

「おばさん、ケーキ全部欲しいんだけど。ちょっとずつ切ってもらえる?」
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