イジワル副社長はウブな秘書を堪能したい
「寝るなよ。茹でダコになるぞ」

 突然、扉の向こうから兄の声がしてはっと我に返る。

「だ、大丈夫。寝てないから!」

 慌てて返答すると、私の声に安心したのか兄の気配が消えた。

 お風呂から上がって、何か飲もうとキッチンへ行くとチンというレンジの音がした。

 お兄ちゃんは何をやってるんだろう?

 兄の動きを観察していたら、ダイニングテーブルの上にホットケーキとホットミルクが置かれた。

 ホットミルクからはかすかにブランデーの香りがする。

「お腹空いてるだろ?冷凍だが上手いぞ」

 そう言って兄は私のお気に入りのメープルシロップをホットケーキにドボドボとかけていく。

「お兄ちゃん、それかけ過ぎだよ」

「そうか?」

 どんだけ甘くするつもり?
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