シンデレラは硝子の靴を
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びしょ。


びしょ。




ぽた、ぽた。





時刻は13時を過ぎている。



沙耶は最後の砦、もとい、コクスィネルコリーヌで、マンデリンのホットをテイクアウトして、あの憎い高層ビルへと向かっていた。



道ですれ違う人々が、ぎょっとした顔をして、沙耶のことを指差して隣とひそひそするか、見えないふりをする。





「ママー!あの人、傘忘れちゃったのかなぁ!?!」




「しっ!!」




裕福そうな親子。


悪気の全くないキラキラ坊やが、沙耶を心配そうに見つめるけれど、母親は血相を変えて、その子の腕を引っ張った。




「・・・」




沙耶の黒くて長い髪は水分を存分に含んで、ずっしりと重たい。



坂月チョイスのスーツも既に二重に黒く見える。


下着までとは言わないが、ほぼ、パーフェクトに濡れている。




パン屋はそれぞれ1時間待ちか30分待ち。


しかも珈琲屋は開店が10時だった。


電車の移動時間だけでも、40分じゃ到底無理な注文だ。



どこでもドアでもない限り、不可能。


いや、タイム風呂敷もないと、駄目だ。




―あんにゃろう…



沙耶は両手に袋を抱え、片手には珈琲を持ち、汗だくで今日何度目かわからない殺意を覚えていた。




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