シンデレラは硝子の靴を
坂月の返答までに、少しだけ間があったのは気になるが。





「それ…どうしたんですか?」



坂月の視線が、置かれた袋に集中している。



「聞こえてたんじゃないですか?」



直ぐに沙耶が訊ね返す。


意地悪いかもしれないが、ドアは開いていたのだから、聞こえていたに違いないのだ。




「秋元さんの声はよく聞こえたんですが…社長の声まではちょっと…」



坂月がへらりと笑う。




「蹴落とされたんです。冷めたから要らないって。」



「!」




事実を即答した沙耶に、坂月の表情が強張った。




「で、棄てろって言われたんで、もらってきました。勿体無いので、私食べます。」




考えてみれば、今まで沙耶は奔走していて昼ご飯がまだだった。


言いながら沙耶は坂月の隣に腰掛けると、袋をがさがさとあさって、やや型崩れしたパンをかじる。




「ほんと、私にするならまだいいですけど、パンたちには罪は無いのに…」



沙耶は文句と共に、パンをどんどん口に詰め込んでいく。




「あー…と、、服、まず着替えた方がいいんじゃないですか?」




ソファにも滲んでくるほどの沙耶の水気に、坂月が提案するが、沙耶は涼しい顔で口をもぐもぐ動かしている。
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