シンデレラは硝子の靴を
「とにかくこれ食べるからあとでいいです。坂月さんも良かったらどうぞ?」



沙耶は坂月にも勧める。



食べてみると、これがまた冷めていても美味しいものばかりで。

さっきまでの苛々も和らぐほどなのだ。


貧乏人だとは思うが、やはり食べ物は良い。


食事の時間は至福の時間だ。


さすが、高いパンだ。



「秋元さん、、それ、幾らだったかわかります?」



浸っている所で急に坂月に話を振られ、沙耶は言葉に詰まった。



「あ?えー…と。」




―確かに高い表示価格ではあったのだが。



「なんか、石垣様の所なら良いですって…」



沙耶の財布は空に近い。切符代だけでいっぱいいっぱいというものだ。





案の定パン屋に行っても、どうすれば良いのかわからなかった。



が、長蛇の列に並んだ末、店員に事情を話そうと近づくと、『ああ!新しい秘書の方ですね』と何故か相手が知っていた。



そして、注文したものを受け取ると、『石垣様によろしくお伝えください』と伝言を承った。


どこの店でも、金銭の要求はなかった。




「おかしいと思いませんでしたか?」



気遣うように訊ねる坂月に、沙耶は首を振った。



「金持ちってこういうもんなのかな、って。」



市場に権利があるバイヤーが、買い付けの時に直に金銭のやりとりをしないのと同じように、金持ちの顔パスで、こうした請求は後から纏めてくることになっているのかと、何も不思議に思わなかったのだ。
< 135 / 416 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop