シンデレラは硝子の靴を
石垣が視線を前に戻し、車が発進すると、沙耶は首を傾げた。



「―だってあんた、私に仕返しする為に雇ったんでしょ?東京湾に沈められることに比べれば、こんな怪我ぐらいかわいいもんですけど。」




「…俺が手を出した訳じゃない。」




「そうだけど…あんたは私の身体のことなんて心配しなくていいじゃない。それよりも早く仕返しを完了させてクビにしなさいよ。今のままだと私雇われる前より良い生活してるんですけどー。」



それは以前から感じていた疑問だった。




「それは、秘書としての仕事をお前がしてるからだろ。俺とは関係ない。」



なのに、石垣はきっぱりと言い放ち、益々沙耶の頭の中はこんがらがる。




「―意味わかんない。」



「着いたぞ。降りろ。」



呟きと共に、重なった石垣の声に、辺りを見回すと、昨晩抜け出した病院の裏口だった。




「あんた、仕事はいいの?」



「終わらせなきゃいけないことは終わらせたし、後は坂月に頼んだ。」



車から降りた所で、もう逃がさないと言わんばかりに、石垣ががっちりと、沙耶の手首を掴む。



「え、やだ。放しなさいよ!」


「逃げるから。」


「ここまで来て逃げないし!」


「よく言うぜ。」



石垣は、呆れたような顔をして、掴む力そのままに自動ドアをくぐった。



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