シンデレラは硝子の靴を
白のベンツが沙耶の前に現れたのは、それから数十分が経過してからのことだった。



沙耶を見つけ、慌てて車から降りてきた坂月は、彼女がすっかり雨に濡れてしまっていることに気付く。




「とりあえず乗ってください。暖房がかかってるので少しは違うと思います。そのまま、病院まで送りますから。」




沙耶は言われるままに、助手席に座る。


坂月の言う通り、車内に強めに掛かっている暖房のおかげで、濡れてしまっているにしても、幾分温かく。




「何があったんですか。」




坂月の心遣いも、じんわりと染みる。



「実は―」



沙耶が先程の出来事をかいつまんで説明している間、坂月は一度も遮ることなく、聴いてくれていた。




病院へ到着した後も、駐車場で暫く沙耶の話に耳を傾ける。




「だから…折角雇っていただきましたけど、、ボディガードとしてももう無理です。犯人探しも半ばで申し訳ないんですけど…」




「―わかりました。」




項垂れる沙耶に、坂月ははっきりと頷いた。



「残念ですが、仕方がありません。。最初から秋元さん嫌がってましたし…むしろそこまで無理をさせてしまって、申し訳ありません。」





百合の花の香りが、まだ車内に漂っている。




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