シンデレラは硝子の靴を
「うー…」
冷たい。
外の空気は冷たいのに。
どうしてこの人はこんなに優しいんだろう。
我慢するのをやめた途端、涙がはらはらと落ちていく。
坂月が差し出してくれたハンカチを受け取って、更に気持ちに拍車がかかった。
「坂月さんは良い人過ぎます~…」
ふにゃふにゃと泣く沙耶に、坂月は困ったような顔をする。
「私は…そんな良い人じゃないですよ。」
「いえ!ちょっと抜けてる所もありますけど!超がつく御人好しです!だから、あんな石垣ともやってけるんですよ!」
涙で顔を濡らしながら、沙耶は力説した。
「―本当に、違うんです。」
坂月の頭の中には警告音が響いていた。
このままじゃ、まずい、と。
「なんか、坂月さんの前だと私もリラックスして話が出来るんです。っていうか、思い返すといつも迷惑ばっかりかけて泣き顔ばっかり見せてる気がします…」
沙耶の無邪気な発言に、坂月の顔は苦痛で歪む。
「違う…」
限界は、とうの昔に越えていた。
ただ、杭を打ち込んで止めてただけで。
そこにないのにあるかのように。
いや、実際あるのにないかのように振舞っていただけ。
幾度も隙間から零れ落ちてしまっていた。
あんなに気をつけていたけれど。