シンデレラは硝子の靴を
「なんでまた坂月なんだよ」



車に乗った途端、今まで幾度も感じてきた思いが口を衝いて出る。




「ちくしょ…」




治まらない苛立ちを、ハンドルにぶつけた。



自分はいつも傷つけてばかり。

現実に怪我もさせて。



―あいつが一番大変な時には、楓が居る。



ガキだと言われようが、なんだろうが。



それが一番嫌だった。



反対に自分は、嫌い嫌いと言われ続けて、我慢できずに触れてしまってから。


沙耶は自分と距離を置くようになってしまって。



もう、どうしていいかわからずに、苦しんだ。




「は…これじゃ苛めっ子と変わらないか…」




苦々しげに呟き、急いでハンドルを回した。



外には灰色のアスファルトが、寒々しく広がっている。





「頼むから。まだ、居てくれよ―」





さぁだと確信したのは、最初の出勤日。




自分が疑心暗鬼に駆られるのは毎度の事で。



あの日もやっぱり沙耶の事を信じきれず、自分を狙う何かに怯え、疑った。




そんな諒に対して彼女は言ったのだ。




『……あんた、馬鹿?』




『私は誰にも媚びない。世界中があんたに跪こうとも、私だけは屈しない。だから、あんた以外の人間にだって同じよ。』





―知ってたか。その台詞―




出逢った頃にも言った事。




さぁは、本当に昔から変わってないんだな。


何にも穢されることなく、あのままで居たんだ。


そう、思った。



それなら。



俺はお前を信じるよ。



他の証拠や言葉がなくても、俺にとってはそれだけで、十分だったんだ。
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