シンデレラは硝子の靴を
瞬間―
「ざけんじゃねぇっつったんだよ!」
バキッ
「うっ」
罵声と共に、沙耶の右手の拳が、石垣の左頬を直撃した。
予期していなかった衝撃に、石垣の身体がよろめき、そのまま倒れこむ。
「年上の人間には敬意を払う!これ常識。世間知らずはあんたの方だっつーの!」
沙耶はパンパンと手を叩き、言い放つ。
「このアマ…こんなことして、ただで済むと思ってんのかよ。」
一瞬呆然としていた石垣が、頬に手を当てながら、忌々しげに脅しをかけるも。
「やれるもんならやってみなさいよ!おかげさまで、既にマイナスよ!こうなったら堕ちるとこまで堕ちてやるわ。どうせ、あんたみたいなのが経営する会社に支えられてるようじゃ、この国も終わったようなもんだからね!」
フン!と沙耶は腰に手を当てて言い切った後、身を翻した。
「待てよ!まだ話は終わってねーよ!」
石垣の言葉に沙耶はピタリと立ち止まる。そして頭だけ振り返り、石垣を睨みつけた。
「ごめんなさいね?誰かと違って忙しいの。用事があるなら次はあんたが来れば?」
ケッと吐き捨てるように沙耶はそう言って、部屋から出て行った。