シンデレラは硝子の靴を
「どーすんの、これから。母親は入院中、弟は高校生。」



つらつらと石垣の口から出てくる個人情報に沙耶は目を見開く。



「なっ…んで、そんなこと…」



「朝飯前だよ、そんなこと。それから?なんだっけ?うちのホテルの従業員の代わりにお前が来たんだっけ?」




馬鹿にしたように鼻で笑う石垣に、沙耶は武者震いのようなものを感じる。




「瀧澤あゆみ、だっけ。そいつにも責任ないとは言えねぇよなぁ?」



「!!!あゆみは悪くないっ!!!」




そう言って石垣を仰ぎ見た途端、顎をグイっと掴まれる。



「放し…「そーいうこと、したんだよ、お前は。」」




触れそうな程の距離で、大きな目に睨み据えられた。




「石垣敵に回したら、命なんてないと思え。善人気取りで世間知らずのお嬢ちゃん。」




―ヤクザだ。



こいつ、ヤクザだ。



いや、ヤクザの方がまだ筋が通っている。



こいつは、中身が腐り切ってる。



沙耶の握り締めた拳がぶるぶると震えた。




―あったま、来た。




「…ざけんなよ。」




沙耶の口から低い声が出る。



「-は?」



聞き取れない石垣は、沙耶の顎を掴んだまま、眉間に皺を寄せた。




< 36 / 416 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop