シンデレラは硝子の靴を
「……俺は悪い人間だって、何度言ったらわかるんです?」
自分はどうして、彼女を使おうなんて馬鹿な真似を考えたんだろう。
最初から勝てる訳、ないのに。
乾いた笑いが口から漏れて、坂月は肩を落とす。
沙耶は何も言わずに、自分を見つめたままだ。
「…俺はね、いつも諒が羨ましかったんです。」
やがて、ぽつ、ぽつり。
根底に眠っているものが、少しずつ零れて落ちていく。
「何でも持っている、諒が。」
若い父親と、優しい母親。
大きな会社の跡継ぎとして決まっていて、将来有望。
賢くて、はつらつとしていて、元気で。
自分とは正反対の存在。
「俺は生まれた時に、死にかけたらしくて。1歳まで病院から家に帰れなかったそうです。」
退院しても、元気に走り回ることは許されず。
年老いた父の傍をずっとくっついて歩いていた。
「そのせいか、諒との接点は、あんまりなくて。でも、諒の母親の体調が芳しくなくなってから、亡くなるまでの間、諒と俺が佐伯家で暮らすことになったんです。」
そこで。
お互い打ち解けずに。
お互い同じ場所へ別々に足を運び。
「貴女に会ったのは、その頃のことです。」
一人の女の子に、恋をした。