シンデレラは硝子の靴を

毎日通ったわけじゃない。



各々が、大人の目を掻い潜って行った。



それぞれの気が向く時が違ったのか、奇跡的に重なることはなかった。



でも。




「…一度だけ、鉢合せしそうになったことがあったんです。」





諒の母親が亡くなった後。




「それが、硝子の靴の約束をした日。」




坂月は元居た家に帰ること。


そして諒は留学することが決まった時。



もう会えなくなると、沙耶に伝えに行く為家を抜け出したら、諒が前を歩いていた。




不思議に思ってそのまま後を尾けて行ったら、着いた場所はなんとあの竹林ではないか。




陰からこっそりと様子を窺う自分に諒は気付かず、沙耶に約束する。





必ず迎えに来ると。





「なんでだって思いました。俺が先に見つけた筈なのにって。俺のなのにって。」




元々仲が良かった訳じゃない二人。



諒は坂月のことを嫌っていたようだったし、母親の傍に近づく自分の事をいつも不満げに見ていた。



亡くなった後、その悲しみは怒りに変わり、坂月に向けられた。




『お前なんか、居なきゃ良いのに。』




言い返すこともできなかった。


自分自身、どうしてここに居るのか。



どうして、諒の母親の事を大事に感じるのか。



わからなかったから。



だけど。



沙耶との思い出は、自分のものとして、癒着していた。





「―だから、もう一度したんです。重ねて。」




奪われてしまわないように。



諒と、同じ約束を。



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