シンデレラは硝子の靴を
開始時刻の20分前。



沙耶は自分の位置について、他の従業員達とパーティーが始まるのを待っていた。



肩に掛かるくらいの髪は纏めてアップにして、ミュアンホテルのロゴの刺繍が入った黒のパンツスーツに装う。



3階の大宴会場は圧巻の広さだった。




今回はビュッフェ形式らしく、収容人数は1500名。




大きなシャンデリアが12個あって、眩い光を放ち、キラキラしている。



下には気品溢れる臙脂の絨毯が広がり、真っ白なテーブルクロスの上には、色とりどりの料理が並べられていた。





―美味しそう。あんなの見たことないよ。




さっき、並べられる時にメニューをチラリと見たけれど。



黒毛和牛のローストビーフ。


イベリコ豚の生ハム。



フォアグラ。


チョコレートファウンテンなど。




―残ったら持って帰れないかな。駿が喜びそう。



沙耶は空腹で腹の虫がきゅるると鳴くのを、悲観めいた気持ちで抑えた。






―それにしたって。




目立たないように目だけで会場を端から端まで見回せば、超がつくセレブ達がわんさか集っている。



詳しくは無いが、大御所の芸能人達も居るようだ。




最終的に、でかでかと掲げられた吊り看板に目をやった。



そこには、『石垣グループ社長就任披露宴』と書かれている。





―どんだけ偉いんだ、石垣。無駄遣い、石垣。ノンエコ、石垣。




心の中で、好きなだけ悪態を吐いた。
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