浮気彼氏から奪うオトコ。





彼女の拳が、思い切りベンチにぶつかる。


そしてその拳に涙が零れ落ちていた。



「あのハンカチ…」


あたしがそっと渡すと、彼女は優しく受け取った。

それなのに思い切り鼻をかんだ。


「っぷ…」

「な、なな何で笑うの!?」


大人しそうな彼女が、鼻をかむのが豪快だったとは…。


「何か…蒼斗クンにお似合いに見えますよ」

「へへ…ありがとう。ハンカチ…洗っても何か嫌だから、また買ってあげるよ」

「えぇ大丈夫ですよ」


「敬語、いらないよ。蒼斗と同じ歳でしょ?

私もだから」


「あ…」

「君は…なんて名前?私はかのん」

「妃鞠…」


すると彼女は柔らかく微笑んでいた。







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