「幽霊なんて怖くないッ!!」
……だって、秋さんは秋さんだから。
私の大好きな秋さんは、どんな姿になっても、秋さんだから……。
「来るぞ」
八峠さんは私の体を離し、秋さんの方を向いたらしい。
……心臓が、バクバクと音を立てている。
50メートルあった距離が、今は8メートルにまで縮まっていた。
「……」
……ゆっくりと目を開けて、秋さんの居る方向を見つめる。
「……秋さん……」
──階段をゆっくりと上ってくる半透明の秋さんは、無表情だった。
喜怒哀楽の色が無い、虚ろな瞳。
だけど、そんな中でも殺意だけはひしひしと伝わってきていて……私と目が合った瞬間に、彼は醜いバケモノの姿となって襲いかかってきた。
……それは、他の幽霊と同じだった。
私を追いかけてくる幽霊、殺そうとしてくる幽霊、そういったモノと何一つ変わらない。
(秋さんはもう、居ない……)
突きつけられた現実の中で、視界が涙で滲む。
その滲んだ景色の中で見えたのは、秋さんの攻撃を防ぐ八峠さんの後ろ姿だった。