【完】英国紳士は甘い恋の賭け事がお好き!
「じゃあ、俺は」
「あ、ありがとうございました!」
お礼を言うと、ミラー越しに手を振って、幹太さんは一度も振り向かず帰っていった。
「――来て下さってありがとう。美麗」
「いえ。約束ですから」
「ふふ。約束だから、ではなく、私に会いたかったと言って貰いたかったです」
悔しそうに笑うデイビットさんに、どう答えていいのか分からず赤面してしまった。
そんな私に気付いたのか優しく手を握り、リードするように歩き出す。
南門に咲き誇るのは、――桜。風にそよぎ、花弁を舞いただわせている。
うちの家の小さな庭に咲く窮屈そうな桜より、大空に突き刺さるように咲き誇る大使館の桜のほうが綺麗だった。
「桜を見るたびに、貴方は一人で泣いていないか考えてしまいます。心配だから、私のポケットにでも入っていてくれないだろうか」
「それは、良いですね。デイビットさんのポケットなら楽しそう」
白の上等なスーツのポケットに入れるぐらいが、ちっぽけな私には似合うかもしれない。
「でも、ポケットに入れたら、キスできないからやはりダメですね」