君と、優しくて愛しい日々を。
「…どうした。ジェイドさんなら、まだ庭にいるぞ」
上質な椅子に腰掛けたまま、彼はくい、と顎で窓のほうを指す。
言われなくても、わかってる。
この部屋の窓から見える、エルフォード邸の豪華な庭。
そこでは、ジェイドがムクギと庭に咲いている花の話をしているはずだ。
ミラゼに用があってミューザに来たが、ジェイドがリロザとも話したいと言うので、連れてきたのだ。
「俺は、お前に用があって来たんだよ」
そう言うと、リロザは目を丸くする。
本を机に置いて、「なんだ」と言ってきた。
俺はあの頃を思い出すように、「本」と言う。
「植物の本、見せてくれ」
ーーパタン。
机の上で開いていた本が、閉じる。
リロザはお決まりのように、眉を寄せていた。
その表情に、思わず笑ってしまう。
……本当、懐かしいよ。