君と、優しくて愛しい日々を。
俺がミラゼの依頼について行って、幼いマリアに会って。
リロザの家で翡翠葛の存在を知り、八年後、ファナに出会った。
そして今、ジェイドが俺の隣にいて、リロザやミラゼと話している。
偶然だというにはあまりに必然的で、必然というにはあまりに偶然が重なりすぎていて。
きっと、俺が依頼屋となってリズパナリの家に訪れたときから、これは決まっていたことなんだ。
「……ほんと、すげえよなぁ」
本から目を離すと、窓から顔を出して、下の庭にいる彼女を見つめる。
長かった髪は、今はもう肩口までに切られてしまったけれど。
その姿はまるで、俺が『はじめて』その髪色を知ったあのときを、思い出させるから。
上から見下ろしても、彼女はそれに気づかず、華やかな庭の上に立っている。