君と、優しくて愛しい日々を。
俺は、その碧色を知ることはなかった。
翡翠葛という植物があることも、知ることはなかった。
ちらりとリロザを見て、隠れてフ、と笑う。
…彼がはじめてジェイドと会ったとき、あんなにも彼がジェイドに惹かれていたのも。
『この本を読んでいた時期にな、私も気になったやつだ』
彼の記憶のなかに、確かに翡翠葛という植物が存在していたのだろう。
俺と、同じ。
だから、その髪色に惹かれた。
だから、その名前をつけた。
……だから、手放せなくなった。
きっと俺があのとき、リズパナリの家に行くことがなければ、俺は次の日もあの奴隷屋を訪れることはなかっただろう。
惹かれていたんだ、無意識に。
彼女が、俺の与えた十五秒のチャンスをものにできなかったのは、確かに偶然かもしれないけれど。