君と、優しくて愛しい日々を。


「ちょっとブレちゃったぁ」

「撮ったの?ここで!?」


まだ駅だぞ、とナツは眉を寄せる。

私はなんだか嬉しくて、また軽快にシャッター音を響かせた。

ナツは「わけわからん」と照れ臭そうにつぶやきながら、黙って撮られている。

やがて満足して、「バス乗ろっかぁ」と私がニコニコして言うと、ナツは呆れたように「俺だけかよ」と言ってきた。


「どうせなら、ふたりで撮ろーよ」


ほら、とナツが私の手を引いて、隣に立たせる。

私の手から携帯を奪い取って、ナツは真上に掲げた。

少しの間のあと、カシャ、と音がする。

「あとで俺にも送っといて」

そう言って私に携帯を返すと、彼は当たり前のように私の手を引いて、歩き始めた。


さっき撮った写真を見つめて、私はふふっと笑う。

…前に会ったときだって、撮ったのにね。

この写真は、それよりも特別に感じるの。

なんで、だろうね。




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