君と、優しくて愛しい日々を。


「彼女にフラれて、おまけに受験勉強にも疲れてる俺に、誰かさんは唐突に告ってくるんだもんなぁ?」


そう言って、ナツはハハ、と笑う。

いきなり自分のことを言われ、どきりとした。

三年前の幼い自分を思い出し、顔が熱くなる。


「…かっ、彼女にフラれたなんて、知らなかったんだもん!」

「ハハ、馬鹿にしてるわけじゃねえよ。顔真っ赤にしてさぁ、手ぇ震えてて。あのときの未海、ホント可愛かった」


かぁぁと、ものすごい勢いで顔の温度が上がってくる。



ー……『ナツが、好きです』



彼をまっすぐに見つめて言ったそんな言葉は、彼への初めての告白の言葉だった。

それは、残念ながら届くことはなかったけど。

まだ十五歳だった私の、精一杯の愛の言葉。


「…その前の夏の、ほんの一ヶ月しか話してなかったのにな。あの一年間、ほんとにずっと俺のこと好きでいてくれたの?」

「…そーだよ。ナツのことばっかり、考えてた」

「ふは。可愛いー」

…ついでに、そのあとの二年間もね。

ずーっとずーっと、君だけを想ってたよ。



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