切れない鎖
仲間

「セボン!」

晩ご飯の時に、シャルンが声を上げた。

シャルンは焼き魚をフォークで食べていた。

箸の使い方が分からないからだ。

初日なので、フォークを使っても良いことになったのだ。

母が笑顔のまま首を傾げる。

言葉が通じていないのだろう。

「美味しいって言ったんですよ」

優輝が言うと、なるほどと言うように母が頷いた。

「フランス語、私も覚えたいです」

咲が言うので、

「三人が日本語を覚えるから大丈夫だよ」

と言うと、咲は

「そうですか」

と笑った。

「一条」

その時、隣に座るユルサルが、優輝の服の袖をくいくいと引っ張った。

ユルサルの足に付いていた鎖は、父が手を尽くして外してくれた。

今では細い足に輪っかの痣が見えている。

それもしばらくすれば消えるだろう。

「ん?どうしたんだい?」

そんなユルサルに優輝は優しく尋ねる。
< 197 / 284 >

この作品をシェア

pagetop