切れない鎖
怪我

あれから、数ヶ月が経った。

桜はもう、散っている。

「優輝さん、お食事ですよ」

咲が朝ご飯を持ってきてくれた。

「ありがとう……」

優輝は弱々しく微笑む。

優輝の足は、もう治らないと医者に言われた。

「父さんは知ってたのかな‥‥‥」

「え?」

「医者に言われてたのかな。僕の足はもう治らないって。だから、僕の足が治ったら探しに行ってもいいって言ったのかな‥‥‥」

「でも優輝さん、警察の方も、ユルサルさん
捜索をしてくださっているんですから……」

咲は自信なさそうに呟いた。

この数ヶ月、ユルサルの行方は一向に知れない。

優輝は一旦箸を持ち、食事には手を付けずに箸を置いた。

「今日も、いいや……。ありがとうね、咲」

そしてまた、弱々しく微笑んだ。

「でも優輝さん、少しでも食べないと身体が‥‥‥」

咲が悲しそうな顔をする。
< 251 / 284 >

この作品をシェア

pagetop