イクメンな彼氏
悠斗さんのマンションは駅の目の前で『green express』までは西に歩いて5分程度だ。

そこからまた西に5分で私のマンション。

2月の風は底冷えするようで毎朝身を縮めるけれど、今日は左手の温もりが全身に染み渡ってゆくようで少しも寒さを感じなかった。

それでもいつも通り2階のガラス扉を開くと、肩の力が抜けるような暖かさにほっと一息つく。

窓の外に見える裸になった枝を揺らす木々が震えているようで切ない。

泡立てられたミルクに埋め尽くされたカップを眺めながら、私は意を決して口火を切った。

「悠斗さん。
暖かくなったら、一緒に私の実家に来てくれませんか?
話したい事があるんです」

話したいけど話したくない。
彼にだけは知って欲しくて、彼にだけは知られたくない事。

矛盾する思いを押さえ込んでうつむいた私に、核心には触れずに穏やかな表情の悠斗さんが言う。

「暖かくなったら……?」

「はい。田舎なので今は雪が積もっていることも多くて。
危ないし、春の方がいいかなって……」
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