イクメンな彼氏
園内に足を踏み入れると、真っ先に目に飛び込んできたのはキリンだった。長い首を折り曲げて、飼育員の持つ葉っぱを頬張っている。

「可愛いですね。目が優しそうで、見ているとほっとしますね」
久しぶりの動物園に嬉しくなって弾んだ声が出た。動物園は小学校の遠足以来だ。

小さな時から両親は旅館の経営で忙しく家族で出掛けたことなんてほとんどない。それでも家に帰ればいつも顔が見られるだけで、幸せだったのだと思うけれど。

「本当だ。動物って癒されるね」優理花ちゃんを抱っこしてキリンを見せてあげながら中津さんも微笑む。

草食動物だからだろうか。
柵の中の穏やかな様子に安心感を覚えた。

その後に見た虎やヒョウの目は鋭くて、檻の中をウロウロと歩き回る様子が少し恐ろしかった。

そしてふれあい動物園ではヤギに餌をあげたり、うさぎを抱っこさせてもらった。

動物は好きなんだけど、触るのはあんまりね、と側で見ていた中津さんがぽつりと呟く。
「うさぎって、神崎さんみたいだね」

「どういう意味ですか?」と尋ねると「秘密」と意味深に笑った。

どういう意味?
寂しくて死んじゃうとか?
私寂しくても死んだりしないけどな、うさぎも本当は寂しくても死んだりしないらしいけど。
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