イクメンな彼氏
やっぱりお弁当なんてやめておけばよかった。もっとお洒落なお弁当ならともかく、彩りも足りなくて恥ずかしい。

中津さんの手が私の手に重なって、うつ向いていた私は驚いて顔を上げる。

……目が合った。

さらさらの黒髪が秋風になびいて、切れ長でくっきりした二重瞼下の大きな黒目に私が映る。目尻が下がって、軽く引かれた口角が動いた。

こんな至近距離でこんな綺麗な顔を見たら、きっとどんな女の人でも目を奪われる。私は彼から視線が離せなくなった。

どうして……すごく、心臓がうるさい。

「ありがとう。いただきます」

手が重なったと思ったのは私の気のせいで、彼の手は私の持っていたお弁当箱を受け取っていく。

あ……そうか、そうだよね。
勝手に意識してしまった自分が恥ずかしい。

耳まで熱いから、顔が赤くなってしまったかもしれない。
私は慌てて「どうぞ」と答えた。
声が上擦ってしまったのは、きっと気づかれていないはず。

誤魔化すように私もお弁当に箸をつけたものの、味なんてわからない。
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