恋愛温度差
「え? なになに??? デート?」

 場の空気をまったく読めてない茂美さんが、会話の中に飛び込んできた。

 君野くんの視線が茂美さんに動き、小さく首を左右に振った。
 否定のサインだ。
 デートではありません、と顔で訴えている。

 わたしは苦笑してから、ケーキを取るために腰をおとした。

「え? デートでしょ」と茂美さんが相も変わらずに、突っ込んでくる。

「黒崎さんの昨日の話をしました」

 君野くんの言葉に「はあ!?」とわたしはケーキも取らずに立ち上がった。

 昨日の話をしたの!?
 わたしは黒崎さんが好きだってことを?
 わたしの長年あたためてきた思いをあっさりと話してしまったと???

 わたしの素っ頓狂な悲鳴に、ちらりと君野くんが視線を動かして、すぐに茂美さんに戻した。

「どうやら合格点には届いてなかったようです。もう一度誘って食事をしてこい、といわれたので。今日、来ました」

「合格点があるの!?」

 そんなの聞いてないし!!

「あるみたいです。今朝、俺も知りました。どこが合格点かは知りませんけど」
「知らないの? それじゃ、また課題の食事会しても合格点に届くかわからないってこと?」
「そうでしょうね」
「そうなの???」
「そのようです」

『ぷっ』と茂美さんが噴き出した。
「ふたりとも、案外いいコンビかも」と。
< 20 / 57 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop