恋愛温度差
「あかりの言う『こわい』ってこういうことかって、噛みしめてた。正直、こういう経験ってしたことないから」
「君野くんは格好いいから。振られたことないんでしょ?」

 君野くんはくくくっと喉の奥でわらって、首を振って否定した。

「振られた経験はあるよ。でも怖いとは思わなかった。次があるし、これで終わりじゃないって思ってたから」
「今は違うの?」
「違う。次なんていらない。終わりにしたくない。好きな女をこの手の中に入れたのに、すぐほかの男に奪われるなんて……嫌に決まってるだろ」

「じゃあ、なんで?」
「わからない。『俺の』ってオーナーに見せつけたくなったのか。あかりに、退路を断たせかったのか。たぶん、両方だな。もともと『曖昧』な状態が好きじゃないから。結果を出したかったんだろうね」
「ありがと。君野くんのおかげで、自分の気持ちに気づけたんだもの」
「こちらこそ」

 君野くんがにっこりと笑って、わたしにキスをしてくれた。

「改めて、姫宮あかりさん、俺と付き合ってください」
「はい、よろこんで!」

「……なに、その飲み屋的な軽い返事」
「え?」

 わたしは、不服そうな表情になる君野くんに小首をかしげた。

「いい加減、店の近くでいちゃつくな」と再度、窓をあけて黒崎さんが呆れた声で言われた。

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